買ってみたワイン
1990年代後半、仕事帰りに週2回表参道にあるワインスクールに通っていた時のこと。
その頃は、ワインを本格的に飲み始めたばかりで、フランスのワインは私にとって高嶺の花でした。
何とか高価なワインをもっと安く、美味しく飲める方法はないかと悩んでいたところ、ワインの先生から「プリムール」があるよ、と教えてもらいました。
プリムールとは、ワインが瓶詰されて出荷される前に、樽の中に入っている状態のものを先物として買うことができるしくみです。
だいたい2年前から買うことができ、将来、市場に出回るときの値段より安く手に入れられるというメリットがあります。
ワインが今のように高騰し続けるとは誰も当時は想像せず、投資の対象として考える人はまだ少ない時代でした。
そんな時、1996年に初めてプリムールでフランス、ボルドー地方のワインを買いました。
その中から次の3本のワインをご紹介します。
いずれも「五大シャトー」のセカンド的な位置づけにあたるワインたちです。
1 パヴィヨン・ルージュ・ド・シャトーマルゴー 1998
2 カリュアド・ラフィット 1998
3 プティ・ムートン・ド・ムートン・ロートシルト 1998
1本目は、1997年、ベストセラーになった渡辺淳一の小説を森田芳光監督が映画化した「失楽園」で、主演の役所広司と黒木瞳が飲み交わしていたワインで有名な「シャトーマルゴー」のセカンドワイン。
マルゴーは当時、女優の川島なお美さんに「私の身体はシャトー・マルゴーでできている」と言わしめた名酒です。
脱線しますが、川島さんは大のワイン通で知られていました。
同じく渡辺淳一原作のドラマ「くれなゐ」の撮影中、ある雨の日、当時通っていた表参道のワインスクールの屋外下りのエスカレーターで、持っていたワインをかばって転倒し、傷を負った事件なんかもありました。
時期は少しあとになりますが、同じスクールに私も通っていて、生徒の間で代々、語り継がれていたものです。
2本目は、シャトー・ラフィット・ロートシルトのセカンドワイン。
ラフィットと言えば、中国の富裕層に圧倒的人気を誇るワイン。
3本目は、シャトー・ムートン・ロートシルトのセカンドワイン。
この3本の中では最も濃厚で骨格のあるワインです。
高級ワインはなかなか手が出ませんが、そのセカンドやサード的な位置づけのワインなら比較的安く手に入るので、ワイン好きな方に超おすすめです。
セカンドやサードといっても、同じブドウ品種を使って、同じ畑や区画でワインをつくっています。
同じぶどうでも樹齢が若すぎたり、天候不順でワインの出来が良くなかったりした時につくられるワインですから、ポテンシャルが高く、またファーストワインより、早く気軽に飲めたり、とお得感満載です。
比べてみたら
さて、当時買った値段と、今現在(2024年4月)ネットで売られている値段を比べてみました。(左が当時、右が現在)
1 パヴィヨン・ルージュ・ド・シャトーマルゴー 1998
4,300円 ⇒42,900円
2 カリュアド・ラフィット 1998
3,900円 ⇒49,800円
3 プティ・ムートン・ド・ムートン・ロートシルト1998
8,300円 ⇒120,000円
これほどまでではないにせよ、フランスワインはこれからも少しずつ、じわじわと値上がりしていくように思います(あくまでも私見です)。
なぜなら、フランスでの生産量は限られているのに、需要は以前として旺盛なこと。世界の富裕層は毎年増え続けていること。
もうひとつは、世界的な物価高騰の流れはしばらく続くと思うから。
では、実際にワインが売れるのか、ということですが、最近では酒の買取専門店が多くできてきましたし、見積もりも無料でやってくれることが多いです。
私は、酒類卸売・輸出入・販売を営むJOY LAB(株)さんで、昔、売却したことがあります。買ったときの値段の3倍から5倍くらいで買い取ってもらえました。
また、もっと高級なワインなら、サザビーズ(Sotheby’s)やクリスティーズ(Christie’s)などの著名な海外オークションに出品してみる価値もあるでしょう。
ただ残念ながら、日本国内のオークションやフリマで高価なワインを売買するのは、その保存状態や品質が確かなのか、偽物でないかなど、慎重に見きわめる必要があると思います。
ふだんワインを十分楽しみつつも、たまには自分を守る貴重な資産として、とらえ直してみるのも良いかもしれません。
まとめ
1 プリムールで買うと、将来、市場に出た時よりも安く買える
(ただ近年ではその価格差が縮まっている)
2 プリムールがあるのはフランスのボルドーワインなど一部のみ
3 ワインは本来、自分や友人たちと楽しむもの
投資はあくまでもオマケとして考える